・アドマイヤムーン ・アドマイヤメイン ・ヴィクトリーラン ・サクラメガワンダー ・ジャリスコライト ・トーホウアラン ・ドリームパスポート ・フサイチジャンク ・マルカシェンク ・メイショウサムソン ・ロジック
“忙しい”“しんどい”“当たらん”“金がない”……年がら年中そんなみっともないことばかりこの欄に書き続けて早や丸3年以上が経過。知人から「情けないことやアホなことばかり書いてないでもっと前向きで建設的なことが書けんのか、いい歳をして」と叱責されることが幾度あったことか。それでもスタイルを変えずにここまでやってきたが、先日気になることがあって少し基本姿勢を変えようかと悩んでいる。なにが気になったかについては30年来の知人Tの次の発言に目を通していただきたい。
「ウチのゼミに競馬好きの連中が何人かいるんですけど“馬券?あんなものはアカン、儲かるわけがない”っていつも言ってますよ、オレ。それだけやなくて、“知り合いに競馬ブックに勤めてる人間がいて、そのオッサンでさえいつも馬券でやられてばかりやとよう愚痴ってる。競馬なんて君たち学生が手を出せるような甘いもんやないぞ”って村上さんの具体例まで出して説教してるんですけど、事実関係に問題はありませんよね」
この発言に久しぶりにムカッとした私。話し手Tは大阪のある私立大学の教授で、たくさんの学生に慕われている包容力のある人物だ。久しぶりに会って酒を飲んだ際に出てきたのがこの話である。彼が私個人を馬券下手と認識するのは構わないが、自分のゼミの学生に「競馬ブックに勤めている人間がいつも馬券でやられてばかりやとよう愚痴ってる」なんて言葉を口にするのはとんでもない誤解であり名誉毀損でもある。まず「いつも馬券でやられてばかり」は事実無根。「いつも」ではなく「しょっちゅう」であり、「よう愚痴ってる」は「結果を振り返って余韻に浸っている」が正解。言葉はもっと正確に使うべしと反論した私である。
「たしかに最近は馬券が当たらん。でも、それは私がきちんと競馬に向き合っていない現在の状況(言い訳?)があるから。これまでに馬券の成績で年間プラスを幾度となく計上(年間集計にそう意味があるとは思えんが)しているし、全盛期に“これだ!”と思った馬の大半は期待通り走った。馬券で稼いでどれだけ分不相応の宴会を主催したことか。儲かるとはしゃいですぐに浪費する性格ゆえに結局は延々と困窮生活が続いているが、まあ、それはそれ。たとえ若者が馬券で負けたとしても、目先の損得だけで考えるべきではない。その経験によってその後の人生で見えてくるものもあるだろうし、人間性に奥行きも出てくる。だいたい君は競馬の素晴らしさを理解していない。人と馬には長い歴史があり、その絆の上に現在の競馬文化が構築されているのであって……」
私がロック喫茶の店主兼使用人だったころにTが客として店にやってきたのが我々の交流のはじまり。繊細さと優しさを兼ね備えたTは大学にブルース研究会なるものを立ち上げて黒人音楽を研究しながら落ち込むと荒井由美(現在の松任谷由美)に耳を傾けるというなんとも理解に苦しむ若者だった。50歳になったいまでも深夜に「いま飲みながらロッド・ステュアートのDVDに嵌ってます。やっぱりロッドってええわぁ」なんてメールを送ってくる感傷派の怪しげな教授である。酒を飲みつつじっくり私の反論を聞いた彼は自分の認識が誤っていたと素直に認めてくれた。ここまでは良かったのだが、酔って喋り出すと止まらなくなる性分の私のこと。勢いでついついしなくていい約束までしてしまった。言い過ぎたと深く深く反省しているのだがもう手遅れ。
「儲けようと思えば儲かるのが競馬。ただ、そのためにはしっかりとした観察と不断の努力が必要。言葉だけなら誰でも言えることだから、まず実行してみせよう。携帯サイト・競馬ブックオンラインに『推理のキー』という私の担当するコーナーがある。土日の後半4レースを馬連(時として3連単もある)5、6点で予想しているが、今年はこのコーナーで年間プラスを計上して、競馬が儲けられるものだということを証明しよう」
あれから数カ月。3回京都が終わった段階で今年の13分の5の日程が終了した。今日(5月20日)の『推理のキー』は4戦全敗、かすりもしなかった。残り8開催は石にかじりついてでも当てないとTと会って胸を張って酒が飲めなくなってしまう。よ〜し、明日の日曜日は万馬券をバリバリ的中させてやるぞ! 競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP