・アイスドール ・アクロスザヘイブン ・ショウナンアルス ・テイエムプリキュア ・マイネサンサン ・ロランラムール
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30名ほどが机を並べている我が栗東編集局。普段は大半の人間が現場に出向いているため閑散としているが、土日の出走メンバーがJRAから発表となる木曜日の午後だけは20代から60代までのスタッフほぼ全員が顔をそろえる。この時間帯の局内の雰囲気をポジティヴに表現すると熱気に満ちた濃〜いプロ集団という感じだが、ネガティヴに捉えると煩雑でまとまりのない怪しげな団体といった感じになる。まあ、その煩雑さの原因になっているのが編集部を仕切っているごく限られた多弁の人間たちなのだが、その限られた人間のなかに私が含まれているというのは改めて付け加えるまでもない。 午後4時前に土日の確定メンバーが発表され、そこから1時間半ほどが業務処理上での最多忙時間帯。6時を越えると編集局内の人間が半減して7時を回るとレギュラーの6、7人が残るだけ。この頃になるとそれぞれが寡黙に職務を遂行して周囲にも静寂が訪れるのだが、そんなときに限って沈黙を破るのが最年長の私。この歳になってもすぐに集中力が途切れるのだから困ったもの。そんな鬱陶しい中年オヤジのボヤきを耐えて受け入れてくれる周囲の人間には心から感謝している。 村上 「へ〜え、リンカーンってこんなにたくさんG1使ってたんだ」 足立 「何回ぐらい走ってるんですか」 村上 「今度の天皇賞で12回目。これって結構な数だよな」 水野 「G1の出走回数の多さならステイゴールドじゃないですか。そういえばメジロファントムもかなり走ってた記憶がありますね。G1レースがいまほど多くなかった時代ですが」 坂井 「ナイスネイチャってのも忘れちゃいけない1頭ですよね」 それから十数分は昔話で盛り上がった。というか、私が周囲を無理矢理雑談に引き込んだというのが真相かもしれない。しかし、さすがに競馬プロフェッショナル集団である。私の漏らしたひと言だけで『G1(JRA)を勝っていなくて、しかもG1レースに出走した回数の多い馬』という私が設定したテーマを瞬時に理解して次々に該当する馬の名前を口にするのだから凄い。それも、自分達が小学生か中学生ぐらいのときに活躍した馬たちの成績をなんともリアルに記憶しているのにも驚かされた。それだけではない。その翌日には坂井が4種類の表を私に手渡してくれたのである。 「G1、G2、G3、そして全グレードレースの4部門で出走回数の多い馬を調べてみました。もちろんJRAG1限定です。ただ、1986年以降のデータなので、馬によっては多少の誤差があるかもしれません」 せっかくの力作なので私のこのアホなコラムで横取りして中途半端に紹介するのは気が引けたが、「すぐに調べられる程度のもの。遠慮なく使ってください」との声に後押しされて(持つべきものは良きスタッフである―笑)ここで紹介することにした。決して盗作、盗用の類ではないことをまず断っておく。
1位に輝いたステイゴールドは引退レースとなった海外G1の香港ヴァースを勝ったのだから成績的にもストーリーとしても文句なしである。このランキングを見るとG1を勝った馬よりも精一杯走り続けながら頂点に立てなかったナイスネイチャやホワイトストーンといった馬たちに愛着を感じてしまう。ちなみに前述の古豪メジロファントム(1977〜1983)もかつて私がのめり込んだ馬の一頭である。この馬のG1成績(現代に置き換えると)は15戦0勝2着3回3着2回4着2回5着1回着外7回。1979年には天皇賞(秋)、有馬記念と2戦連続して写真判定でハナ差敗れた悲運の馬だった。当時の週報の特集記事で『クレオパトラではないが、このメジロファントムのハナがあと数センチ高かったら日本の競馬史は大きく変わっていただろう』と書いたところ、周囲の記者仲間の一部には発想が面白いと受けた。しかし、関西へ遠征していたメジロファントムの厩務員さんには「勝負の世界なんだから、あんな興味本位の茶化した表現はいかん」と叱られてしまったが、いまとなっては懐かしい思い出のひとつ。ちなみにこのメジロファントムの主戦だったのが渋味のある騎乗でファンの多かった横山富雄さん、つまり横山典弘騎手のお父さんである。 今回は他の3部門のランキングも取り上げるつもりでいたが、これ以上長くなると携帯サイトでご覧の皆さんのパケット通信料が心配になってくる。やむなく次の機会にでもと考えているが、残る部門の第1位を紹介すると、『グレードレース最多出走馬』はブリリアントロード(1998〜2003)とロサード(1998〜2003)の41戦、『G2最多出走馬』はアクティブバイオ(2000〜2005)の19戦、『G3最多出走馬』はブリリアントロードの26戦となっている。現役馬に目を向けてみるとG1出走回数ランキング10位タイ(12走)にバランスオブゲーム、20位タイ(11走)にリンカーン、テレグノシスといった馬たちが名を連ねており、それぞれが無事で息の長い競走生活を続けて欲しいものである。
競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP