・キストゥヘヴン ・テイエムプリキュア ・ダイワパッション ・ユメノオーラ ・アサヒライジング ・コイウタ ・アルーリングボイス ・ラッシュライフ ・シェルズレイ ・アドマイヤキッス ・フサイチパンドラ
『風邪でダウンしていた2月10日の夕方、「明日のライヴ何時からだったっけ」と知人から電話が入った。約束を思い出してすぐさま病院に走り1時間の点滴。翌日はフラつきながら大阪北区にあるバナナホールへ。超満員の熱気に圧倒され、KBS京都TV美女軍団の「○○さ〜ん」「○ー○さんステキー!」の嬌声にひるみつつも最後まで頑張った。看護の目的で同行したはずのウチのつれあいは病人を放置したままステージに熱中。私は「う〜ん、シンガーソングライダー」と呟くのが精一杯。もちろん、誰一人としてその言葉に耳を貸さなかった。今週は○○騎手騎乗のフラワーパーク(マイラーズC)を』
この原稿(そう呼べる代物ではないが、まあいいか)は1997年2月24日発行号の週刊競馬ブック・ブロードキャストコメンテイター欄に私が書いたもの。1997年春といえばキョウエイマーチが桜花賞を勝ち、サニーブライアンが皐月賞を勝った年だから、いまから9年前に遡る。JRAの現役騎手が大阪のライヴハウスでコンサートを開くと聞いて嬉しがって応援に出かけたのである。ところが、失敗がひとつ。どうせ一杯になんてなるわけがないと決めつけてギリギリにライヴハウスへ出向いたところ、な、な、なんと場内は開演前から超満員。どうにかこうにか会場には潜り込めたが、すでにオールスタンディングの盛り上がり。最後方でつま先立ちして1時間半ほどのステージを見終えるともう膝が笑って下半身はヨレヨレ。ただただ肉体の衰えを痛感した。しかし、素朴で気取りのないホールのつくりや全体の雰囲気は結構気に入った。
いまでも精力的な活動を続ける上田正樹や忌野清志郎。そんな彼らがソウルフルな歌声を聞かせることで人気を呼んでいた大阪北区にあるバナナホールが4月9日のライヴを最後に休業することになった。昨年に所有権を得たIT企業が新時代向けのクラブ(演奏を同時録音してネットへ配信できる空間)への改装を計画しているのに対して、大阪らしい素朴な雰囲気を残したいというファンとの間で話し合いが続けられているとのことだが、現状のままでの存続は難しそうだ。京都では酒蔵や倉庫を改造したライブハウスがROCKやR&Bの拠点として30年以上も根強い支持を集めている。大阪と京都では地域性に違いはあるが、このバナナホールも個人的にはなんとか残して欲しい場所である。
浪人時代の一時期を過ごした東京にも個人的に記憶に残る場所がある。困窮生活と戦い、300円を握り締めて朝から晩まで一日中洋画を見つづけた渋谷明治通りの全線座。飛び込みで入って耳にしたヴォーカリストの凄いパワーに圧倒され、毎晩のように通い続けた下北沢のライヴハウス。臨時収入が入ると仲間と連れ立って明け方まで飲食を貪った新宿西口界隈の商店街。あの頃を振り返るとちょっぴり屈折していて限りなく刹那的。みっともない日常を過ごしていた(本質的にはいまとそう変わっていない気もする―汗)が、当時の記憶はいつまでも鮮明。仕事で東京に出向いたときは暇をみつけて昔徘徊した街角を歩いてみたりするが、当然ながら同じ場所とは思えない新しい風景が広がっていて落胆してばかり。
明日(4月2日)から2泊3日の日程で久しぶりに東京へ出張する。土日をはさむ出張(この業界ならでは)の場合は開催場所が東京か中山かを問わずなるべく競馬場に行くように心がけているのだが、4月とは思えない寒さに負けて今回は断念するつもり。最近は競馬場とその周辺にしか土地勘がなくなっているのも歯がゆい。通い慣れた道や馴染みの場所ばかりを利用せずにもっと行動範囲を広げなくてはいけないと思うのだが、年齢を経るごとにより保守的になっている。これではいけない。
よ〜し、明日は馬券で勝負して六本木にでも繰り出してやる!
一旦はこう書いてみたが、5分後には前言を撤回したくなった。日曜版の新聞を見ると大阪杯は雨量次第で大きく結果が変わりそう。難解すぎるのだ。一方のダービー卿CTはコスモシンドラーかとも思うが、メテオバーストにもそそられるしアルビレオも気になる。とてもとても絞り込めそうにない。チャレンジ精神が奏功して華麗なる六本木の夜を経験するのか、それともホテルで孤独と戦いつつ缶ビール&コンビニ弁当で過ごすことになるのか……。あれこれ考えると今夜はとても眠れそうにない。
競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP