・アルビレオ ・グランリーオ ・キングストレイル ・マイネルレコルト
・リミットレスビッド ・タイキエニグマ ・シルヴァーゼット ・サンライズバッカス ・マイティスプリング ・メイショウボーラー
・マイネサマンサ ・オースミハルカ ・レクレドール ・ディアデラノビア
今年最初のダブル開催が始まった。京都と小倉の二場で同時に競馬が行われるのだが、だからといってスタッフが二倍に増えることはない。現場も内勤も現有スタッフのままだから一気に多忙になる。基本的に小倉に出走する馬は栗東で追い切って前日輸送で現地に向かうケースが大半だが、輸送に弱い馬が早目に競馬場へ入厩したり、放牧に出されていた馬が直接小倉入りするケースもある。そのために調教班と厩舎取材班がひとりずつ真冬の小倉に4週間滞在する。それ以外にも、土日の開催日には応援部隊が現地へ駆けつけてレース当日の取材を行う。金曜午後の新幹線に乗って小倉入りして日曜日の夜に栗東へ戻ってくるパターンだが、これはこれで慌しい。冬の小倉はフグが美味だが、そんなお気楽なことを考えているのはわたしぐらいかもしれない。 ダブル開催になると本紙予想は京都と小倉でそれぞれの専属班が担当するが、個人予想は二場を兼任するスタッフが何名か出てくる。単独開催だと予想者は金曜朝までに土曜全12レースを、土曜朝までに日曜全12レースの予想を提出すればいいが、この時期の兼任者は金曜朝までに24レースを、そして土曜朝までに24レースの予想を済ませねばならない。ひとレースを10分で終えたとして12レースで2時間、24レースだと4時間を費やす計算だが、メンバー次第では5分もかからず印をつけ終わるレースもあれば、30分、1時間が過ぎても結論が出ないレースもある。能力表、調教時計、厩舎談話といった配布されたデータだけでは印を決められず、VTRを何度も何度も繰り返して見ていると延々と時間が過ぎる。予想とは時間との戦いであり気力との戦いでもある。 私も数年前までこんな立場だったが、途中でビールでも飲んだりしようものならもう駄目。集中力が途切れて一気に感覚的で安易な推理になってしまう。こうなるとまず当たらない。限られた時間のなかでどれだけ緊張感を持続できるか、馬のイメージをどれだけ正確に組み立てられるかが的中の鍵を握る。馬が見えて読みが冴えている時期は予想を打つことが限りなく楽しくて競馬記者が天職だと浮かれる。逆に寝る間も惜しんで予想をしても見当違いの結果ばかりになったりすると、なんでこんな因果な仕事を続けているのかと激しく落ち込む。後者のケースの方が多いのはご推察の通り。まあ、なんとも不健康な職種である。 私が内勤になって丸4年。現在、予想に携わっているのは携帯サイト・競馬ブックオンラインの『推理のキー』だけ。このコーナーはその日の9、10、11、12レースが対象。ポイントを絞って馬連で予想するスタイルになっているが、これがまあ当たらない。昨年秋に一旦は回収率95パーセントを超えて、『年間収支を黒字にするぞ』と周囲に宣言した途端に予想はボロボロ。最終的には年間回収率が83パーセント台で終わった。現場時代は取材と予想がメインだったが、現在は内勤になって原稿作成が主体。それを言い訳にして予想を考えなくなったツケが回ってきているのは明らか。このままでは年々回収率の下落を阻止できそうにない。
なにやら暗くなってきたので昔の自慢話で気分転換でもしてみよう。いま手もとに1990年1月22日発行の週刊競馬ブックがある。すっかりセピア色になったページをパラパラとめくってみると“京都7日目、村上夢のパーフェクト達成!”という見出しがニュースぷらざに躍っている。あの頃は馬のことならなんでも判ると勝手に思い込み、競馬記者なら馬券を当てて当然という自負もあった。あれからちょうど16年、いまや若手記者に「どれか面白そうな馬、いないか」なんて情けない質問をするまでに落ち込んでいる自分に気づく。馬が好きで予想が好きで飛び込んだこの世界。なのに、これではいけない。だいたいが、昔話や若い頃の自慢話を得意げにする中年オヤジにろくなやつはいない。懐古趣味に陥っていないでもっと前向きにならないと……。
1月23日、月曜日。午前11時。中山の代替競馬を見ながら会社の机に向かってこの原稿を書いていると、ある厩舎関係者が「週報一冊くださ〜い」と会社にやってきた。この日の栗東は朝からの降雪で一面真っ白。そんななかを車ではるばるやってきた彼は「頭の中では(火曜発売)判っていたのに(照れ笑い)、ついついクセになっているもんだから」と頭をかきながら帰って行った。習慣とは恐ろしいものである。そこで私も考えた。もっと予想を的中させること、馬券を当てることを日々の習慣にしなくてはと。よおし、今年の『推理のキー』は年間回収率100パーセントをめざしてやる!
競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP