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超人的なプレーに胸を躍らせ、完璧な演技に息を呑む。そんな迫力ある画面が次々と映し出されるオリンピックに夢中だ。連日、早めに帰宅するとテレビの前にくぎづけになって熱狂、そして酔っ払っている。テレビといえば、普段はニュース、ドキュメンタリー、スポーツ中継ぐらいしかまともに見ることがない私。長時間テレビに向かい合う習慣がないので心身とも想像以上に消耗するが、4年に一度のことなのだから仕方ないと諦めつつ、ギリシャから送られてくる映像にかぶりついてヘロヘロになっている。
柔道ニッポンの形の美しさに陶酔し、28年ぶりに金メダルを奪回した男子体操競技(団体)の緻密さにも痺れた。「決勝で一本勝ちできなかったのが口惜しい」と直後の共同インタビューを寡黙のままに切り上げた柔道(男子60キロ級)の野村忠宏。その態度からは武道家として、そして孤高の王者としての誇りが伝わってきた。
一方、野球の日本―台湾戦で延長10回に送りバント(無死一塁二塁で)を決めた中村紀洋の姿。犠打を決めてベンチへ帰る際のガッツポーズは、彼自身が高校生に戻ったのではないかと思えたほど。そんな彼らの一挙一動には背負う日の丸の重さが表現されている。男子平泳ぎの北島康介の「超気持ちいい!」という今風のストレートな喜びの言葉も、普段ほど違和感なく受けとめられるから不思議だ。そんなアスリートたちを見るにつけ、自分自身も中継の画面に引き込まれてしまう。やっぱりスポーツはいい。
ふと競馬について考えてみた。これほど熱狂してレースを観戦したことがあっただろうかと。エルコンドルパサーが出走した1999年の凱旋門賞は夜中にグリーンチャンネルにかじりついて熱狂。惜敗に歯ぎしりしつつも、その夜はサイモン&ガーファンクルの『ELCONDORPASA』を繰り返し聴きながら泥酔したものだった。あれからもうすぐ5年になろうとしているのに、当時の興奮を超えるようなレースに巡り逢っていない。今年はタップダンスシチーが凱旋門賞に出走の予定だが、日本馬として新たな歴史を刻んで欲しいものである。そして、タップダンスシチーのあとにも世界をめざす日本馬が出現して欲しい。国際舞台で活躍するプレーヤーがいてこそ、そのスポーツが一流だと認知される時代なのだから。
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競馬ブック編集局員 村上和巳
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