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黒光りした毛ヅヤとバランスの取れた馬体。テレビの画面を通して見るよりも遥かに魅力的な雰囲気だったブラックタイド。2番人気だけのことはあるなと納得したが、本馬場でキャンターに移った途端にそのイメージが崩れた。明らかにトモが甘く前脚だけで走っている。気分良く行かせると追って甘くなる傾向がある馬だけに、勝負を賭けるとすれば中団からの差しに徹する作戦しかなさそうなのもつらい。何故なら、この日の中山の芝は絶好のコンディション。皐月賞までに行われた芝のレースでは逃げ馬が大活躍((1)(3)(3)(1)着)しており、上がりも速い。武豊をもってしても今日のブラックタイドに厳しい条件だ。
堂々の1番人気に支持されたのはホッカイドウ競馬の雄コスモバルク。芝で3戦全勝、前哨戦の強さも目についた。少々テンションが高く馬体そのものも平凡。この馬のどこにあの強さが潜んでいるのかとさえ思ったが、キャンターに移ると一変。バネのきいた力強いフットワークが目についた。スッといい位置を取って前々で流れに乗れる脚質なのも今日の馬場状態にピッタリ。この段階で軸は決まった。
昨年の最優秀2歳牡馬で3番人気の支持を集めていたのがコスモサンビーム。寸分の狂いもなく仕上げられて気合も乗っていたが、完歩の小さなキャンターが気になった。ザグレブ産駒ではあるが、この馬にとって2000mは少し長いのかもしれない。
個人的にちょっぴり注目していたのは7番人気のマイネルブルック。エンジンのかかりが遅いので皐月賞向きではないと判っていても、何故か気になる1頭だった。しかし、馬体にも気配にも冴えがない。キャンターにおろす段階になってもコズミがひどく、四肢がスムーズに前へ出ない。これでは捨てるしかない。
気に入ったのは10番人気のダイワメジャー。心身ともに若さが目立ってはいたが、筋肉の塊のようなその馬体はひと際目についた。デビュー時はあまりにもイレ込みが激しくて2人びきでも制御できず、その背に人間を乗せて3人がかりでパドックを周回したとか。そんな馬が2人びきでスムーズに馬場入り。キャンターに移ってもデムーロの指示に従って気分良さそうに駆けている。狙うなら今回だと直感した。
大逃げ宣言をしていたマイネルマクロスが発馬で出遅れて、メイショウボーラーが思い通りの逃げを打った皐月賞。前半1000mのラップが59秒7だった時点で差し馬は圏外に去った。そして私は珍しくも払い戻し所に並ぶことができた。記者席という恵まれた空間で落ち着いて馬を見られたこともあるが、競馬を楽しむとしたら、やはりライヴがいちばんだと実感した。
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競馬ブック編集局員 村上和巳
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