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編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
おめでとう、ケン坊






 

◆“おめでとう、ケン坊”

  初めて池添謙一に会ったのは1998年の2月、つまり彼が騎手としてデビューする直前だったと思う。当時の彼は水泳の北島康介選手を幼くしたような顔つきをした18歳の若者で、新人騎手がかぶる黄色いヘルメットがよく似合った。そして、その奥で光るキラキラした眼が、意志の強さと前向きな性格を表現していた。

 デビュー当初は4コーナーを回った途端に先頭に飛び出してしまい、ゴール前ではバテるという元気のよすぎるレースが二度、三度。後日「ちょっと早かったですよね」「ちょっとじゃない。無茶苦茶早かったぞ、ケン坊」と笑いながら会話したことも幾度かあった。それでも、失敗を無駄にすることなく着実にステップアップした頑張り屋さんの彼は、JRA賞(最多勝利新人騎手)と関西放送記者クラブ賞を受賞。同期デビューの新人騎手の頂点に立った。

 あれから6年が経過。一昨年にアローキャリーとのコンビで桜花賞を制したのを皮切りに、昨年はデュランダルとのコンビでG1のスプリンターズS、マイルチャンピオンSを連勝。“乗れる若手”としてメキメキと頭角を現してきた。ここまでに300を超える勝ち星を積み重ねているだけでも立派だが、それ以上にフェアプレー賞(ある程度の勝ち星を挙げていて、なおかつ年間の制裁が極めて少ない騎手に与えられる)を3度受賞しているのは見事という他ない。

 そんな池添騎手が間もなく結婚する。そういえば、「僕のメールアドレス、知らせておきますからね」と最初に教えてくれたときは、可愛い女性アイドルの名前をもじったものだった。それが、しばらくすると「これに変えました」と男っぽいシンプルなものに変更されていた。う〜ん、なにかあるなとは想像していたが、こんなに早く結婚するとは考えてもいなかった。しかし、ヤンチャ坊主の面とひたむきでピュアな部分とが同居している彼のこと。自身の環境を整えつつ、より高みをめざすのもいいかなとも思う。

 おめでとう、ケン坊。怪我に気をつけて、幸せになれよ。君が結婚したとなると、残るのは後輩に次々と抜かれたまま長々と独身寮の寮長を続けるクニヒコ(渡辺薫彦騎手)だけ。機会があったら彼に誰かを紹介してやって欲しいんだが、なにせ公私ともに勝ち味に遅いヤツだからなあ……。


競馬ブック編集局員 村上和巳


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