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編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
インタビュー






 

◆“インタビュー”

  「○○騎手の話が抜けたので最終レースでフォローします」土日は現場からこんな連絡がよく入る。週刊ケイバブックでは土日の全レースのインタビューを掲載している。上位入線馬とある程度の人気を集めていた馬に跨ったジョッキーたちから、レース後の勝因、敗因を取材するのだが、これが想像以上に大変な作業なのだ。

 レースを終えた騎手たちはすぐに後検量を済ませると、まず泥まみれの顔や勝負服の汚れを落としてパトロールフィルム放映室へ。そこでレースVTRを確認するや否や、すぐに次のレースの準備に入る。勝負服を着替えて鞍と錘(鉛の板)をそろえて再び検量室へ。連続騎乗の場合は数分間のうちにこの作業を済ませて、時間があればパドックへ。無理な場合は騎手控え室で短い休憩をとる。この慌しい時間帯に勝因、敗因を取材しようというのだから、まあバタバタする。

 どこの競馬場もインタビュー室が設置されているが、そんなものは形ばかりで利用されることはまずない。勝利騎手は検量室前で共同インタビューが行われるが、他の騎手の場合は検量室の出入り口とそこから控え室に向かう短い通路だけで声をかけてなんとか言葉を引き出す。それ以外の空間では報道陣は出入り禁止なのだから。そんな瞬間芸もどきの行為でレース直後の気持ちの昂ぶった彼らから正確なコメントを引き出すのは至難の業だ。

 「……」と無言で通す人間もいれば「見ての通りや」と多くを語らない人間も少なくない。なかには「どこ見てんだ! あれだけ大きな不利があったのに」なんて切れる人間さえいる。野球やサッカーといった競技ならばある程度は頭で質問を組み立てられるが、物言わぬサラブレッドが主役の競馬ではその背に跨っていたジョッキーたちでも「なんで走らんかったんやろ……」と絶句することがしばしば。こんなとき、取材者に必要なことはなにかというと、まずはきちんとした競馬観と冷静な対応。それぞれの馬がどんなレースをしたかを頭に入れ、跨っていた騎手がどんな心境なのかを考慮しつつ手短に質問をしなくてはいけない。

 ファンあってこその競馬であり、1頭の競走馬が誕生するまでには生産、育成、馴致も含めて様々な人間の苦労がある。そんな人間たちの想いに対して、サラブレッドの代弁者として騎手たちには説明責任がある。間もなく高松宮記念があり、そして桜花賞。今年のG1レースでは記憶に残る素敵なインタビューを聞いてみたい。そのためには、取材する側のレベルアップも必要不可欠な条件である。


競馬ブック編集局員 村上和巳


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