コーナーTOP
CONTENTS
PHOTOパドック
ニュースぷらざ

1週間分の競馬ニュースをピックアップ

編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
記念ジャンパー






 

◆“記念ジャンパー”

  先日、秋山真一郎騎手からジャンパーを頂いた。人を介してのもので本人から直接の説明はなかったが、区切りの100勝ごとに記念のジャンパーを作って競馬関係者や我々マスコミに配っている彼のこと。それが300勝記念なのはすぐに判った。黒地に青い文字のアルファベッド(彼のイニシャルのAとS)をクロスさせたお洒落なデザイン。私が身につけるには少々派手過ぎるかなとも考えたが、気にせずに着て悦に入っている。真一郎、ありがとう。

 現場取材をしていた頃はよくジャンパーを頂いた。重賞を勝つと、オーナー(調教師、騎手が作る場合も少なくない)が記念ジャンパーを作り、スタッフや関係者に配る習慣がある。たいがいは調教時に着られるカジュアルなもので、背中にレース名が入った目立つものが多い。時として我々取材陣の分まで作ってくれる方もいて、そんな時には喜んで頂いた。取材記者がどんなジャンパーを着ているかでその人間の得意厩舎が判ったり人脈が掴めたりするから、現場の人間の感覚としては見ていてそれなりに面白い。

 二十年以上の現場生活を送った私の自慢のひとつに『ジャンパー三冠達成』がある。なんやそれ?とお思いだろうが、文字通り記念ジャンパー三冠を達成したのである。1996年の三冠レースは皐月賞をイシノサンデーが勝ち、ダービーはフサイチコンコルドが、そして菊花賞はダンスインザダークが制した。後日、山内研二調教師からステーブルカラーでお馴染みのピンク、小林稔調教師からは鮮やかな赤を、そして橋口弘次郎調教師からは落ち着いた緑のジャンパーを、それぞれ頂いた。日替わりでこの三種類を着てトレセンに行くと「信号みたいやな」と周囲に冷やかされたが、気に入ってしばらくは身につけていた。

 この記念ジャンパーにも弊害はあった。ある記念ジャンパーを着てよその厩舎に顔を出すというのも考え方によっては随分失礼な行為。やむなく、車に数種類のジャンパーを用意しておき、取材先に応じて車の中で着替えるなんてことも少なくなかった。厩舎取材というのは人間同士の気持ちが通い合ってこそ。お互いに気遣いが必要なのはいうまでもない。とはいえ、根がそそっかしい私のこと、時として着替えるのを忘れて嫌われたことも少なくはなかったが、そんなみっともない記憶もいまとなっては懐かしい。


競馬ブック編集局員 村上和巳


copyright (C)NEC Interchannel,Ltd./ケイバブック1997-2003