編集員通信


「あんた地方競馬の調教師?」


 目野哲也師は1987年に調教師免許を取得、88年10月に開業した。厩舎成績というのは良い時もあれば悪い時もある。波があり、毎年同じようにはいかない。そうした中で積み重ねた勝利が206(JRA)結構な数字だ。それが、今年は1勝に漕ぎつけたのが4月18日。タヤスエネルギーと分け合う同着で片目を開けた。

 実は、地方競馬指定交流競走ではそれ迄に7勝、2着4回、3着2回、着外4回で連対率はなんと0.647という高率であり、すべて特別レース勝ちであったわけで、これを合算すれば関西リーディング・トレーナーランキングの95位から、一挙に8位へ浮上する。先週迄は、地方での勝ち鞍しかなかったために、仲の良い周囲の面々に度々冷やかされていた。

「貴方、JRAの調教師ではなかったの?」「そう、私は地方競馬の調教師、ギャハハハ……」腹を抱えて笑い飛ばせるジョークですんでいるから良いようなものの、度重なってくると、さすがにうんざりしていたよう。
 「同着でもイイんだ。JRAで勝てばネ。あんたとこ(ケイバブック)も悪いヨ。地方の勝ち数もちゃんと合算してくれていたら、こんなこと言われへんのに、恨むヨ(笑)」「そんなん言うたかて、ウチは交流競走の成績表を騎手、調教師共一覧表にして、別のコーナーにちゃんと載せてますやん。それを見てくれない人が悪い。今度それ言われたら言ってやって」「知ってからかうんや。始末に悪い連中やねん」「そう言い合える友達が沢山いるのは幸せと思わにやァ」

 馬主経済を考えれば、いかにして少しでも多くの賞金を稼ぎ出すかが調教師に課せられた義務であり、手腕の評価の対象。実利を優先することが、ひいては明日の展開に繋がる。3歳が6頭入厩、一方で4歳未出走馬もまだ6頭残っている。せめて、それ等を何とかして競走場へ送り出したいと懸命に努めている現況。

 「これからはJRAで勝ち星を伸ばして行くから、見ててヨ」。目野師の決めのセリフを忘れないで、見守りたい。どこで勝とうが、収得賞金は変わらない。「今迄通りでエエやん、勝てる確率の高い方を選択する。ローカルであれ、地方競馬であれ卑下することないで。あんたは偉い」とヨイショして来たが、後で哲チャン(目野師)「こそばゆっ」と身をよじっていたかも……。

編集局長 坂本日出男

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