編集員通信


本馬場入場後の行動


 パドックから本馬場へ移動した競走馬は、入場後直ちに散って行ってよいわけではない。ファンが、騎手が跨ってからどう変化したか、本馬場で状態の最終確認が出来るように、誘導馬に従って正面審判席の前までは常歩で進むことを義務づけられている。

 ところが、数年も前からこの規則を守っている騎手が少なくなっていた。ファンの歓声によって驚いた馬が暴走するのを避ける意味もあるし、馬をしっかり御せない騎手が多いこともある。さすがに岡部、武豊クラスになると、特殊な例を除き規定で定められた位置までは馬を持ってきている。

 しかし、全てが騎手の責任とされていたこの馬場入場後の行動が、必ずしも騎手の技術の拙さのせいとばかり言えないことが分かった。調教方法が昔と違ってきているのが原因。馬場に入れると1周は常足で行き、あと1周でキャンターなり、ギャロップなりに変わったものだが、今は、角馬場(1周200〜500mくらい何種類かある)でウォーミングアップをすませ、筋肉をほぐしてからコース入りするのが主流なので、入ればそのまま追い切りの態勢へと移る。
 又、坂路コースでもそうで、一歩コースに踏み入れると直ちにスピードアップ、すっかりそれが習性となってしまっている。ために、競馬場へ来ても馬は反射的に馬場へ入ると駆け出してしまい、止めようがないというのが実情。現在の調教方法が改善されない限り正面まで常歩で歩かせるのは困難。そこでの最終チェックは望めそうにない。

 蛇足だが、ウォーミングアップは“返し馬”ではなくて“地乗り”。現在使われている“返し馬”の本来の意味は、ゴールイン後に流したあと、後検量に引き揚げて来る時のことを言う。一般化した現在、“地乗り”でも“返し馬”でもどちらでも大した問題ではないが……。


編集局長 坂本日出男

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