編集員通信


〈突っ走る武幸四郎の秘密〉


 昨年1年間で31勝(中央)だった武幸四郎が、今年はひと開催しか終わっていないのにもう8勝、つまり年間の1/4を稼いでいる。昨年は確かに、怪我があったし、他の減量の利く1年生の活躍で走る(勝てそうな)馬が回って来なかったのは事実。技術的に買い被られていた反動が、翌年になってきたということはない。調教師は第1に武豊に乗って欲しいし、彼が駄目なら河内、或いは四位、松永幹にということになる。が乗れる騎手は数限られていて、騎手の奪い合いになっているのが実情。そこで、次代のスタージョッキー掘り起こしに力を入れ、周囲への目配りは感心するほど。

 例えば伊藤雄師に、“近頃の若手はどうです?”と問えば、即座に返ってくる。“幸四郎にしても、四位にしても普段の努力が違う。幸四郎なんかは、誰彼となく先輩を捕まえてはあれこれと質問攻め。レースでああ乗る、こう乗るから、あの馬はどんな馬か(気性)とか、運動中にも絶えず周囲の馬を観察している。そんな心構えが、突然依頼を受けた時にも戸惑わず、存分に持ち味を引き出して結果で返してくる。

 よく勉強しているな、と言うことになれば、狭いトレセンの内のことだけにたちまち口コミで広がる。元々センスの良い子だから、礼儀さえぞんざいでない限り、機会があれば乗せてやろう、後押ししてやろうという調教師がふえる。兄と比べられるので可哀想な面もあったが、そうした時期を通り越して、やっと自分の良さが前面に押し出され始め、中途半端な乗り方がすっかり影を潜め、メリハリの利いた気持ちの良いレースが多くなったのは良い傾向だ”と。

 普段の努力をするとしないとでは、1日1日の積み重ねで1年365日、最終的には大きな差が生じる。調教師自身のことを言っているのかも知れないが……。“自厩舎、他厩舎に関係なく、よく見させて頂いてます”と笑う伊藤雄師でした。

(編集局長 坂本日出男)

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