編集員通信


〈 ところで皆さん 〉

 ビッグダンジグが腸捻転で急死しました。妙に悲しいんです。2勝を挙げただけの4歳馬。まだ900万条件の馬。決してスターホースではありません。なのに、妙に悲しいんです。

 この馬、7戦しています。デビュー戦が2馬身、2戦目が3馬身、3戦目がスタート直後に落馬、5戦目が2秒、7戦目が6馬身の出遅れ。まともにスタートを切ったのは4戦目と6戦目の2回だけ。その間、ずっと1番人気でした。馬券を買って、裏切られたファンがいかに多かったことか。想像がつきます。私もその中のひとりです。

 でも、私、この馬には、裏切られても、そう腹立たしい思いはなかったんです。白井厩舎の人が、何回か、“今日はウチは第13Rがあるんや”と言っていました。全レースが終わったあとの競馬場でのゲート審査です。栗東でのゲート練習もイヤというほどやられていました。そんな事情を知っているからなのかも知れません。

 でも、今、考えてみますと、それだけじゃないような気がするんです。それは何だったのか。私とビッグダンジグの間に、私が勝手に作り上げた信頼関係があったような気がするんです。私の方には、“たとえ出遅れても君なら許す”という気持ち。彼の方は、“今度こそ出遅れないようにします”と、必死に頑張ってくれている。そう信じていました。だから、出遅れても、“まあ、しゃあないか”、で済ましてしまったような気がします。

 もちろん、ビッグダンジグが弱い馬で、ただ単に出遅れ癖のある馬なら馬券は買いません。たとえ出遅れても、能力で何とかしてくれる、それだけの馬だったからこそ生まれた信頼関係です。2度取らせてもらって、5度取られました。収支は当然マイナスです。でも、これからもビッグダンジグの馬券は買い続けるつもりでした。損得抜きの気持ちで馬券を買う。そんな馬とは滅多に巡り合えません。ビッグダンジグという馬は、そんな馬だったから、妙に悲しいんだと思うんです。柄にもなくセンチすぎますかね。

 〈ところで皆さん〉。今週の阪神のローズSには桜花賞馬のファレノプシスが登録しています。2週後の毎日王冠には宝塚記念馬のサイレンススズカが、京都大賞典にはダービー馬のスペシャルウィークが出走を予定しています。GIの足音が聞こえてきました。

(競馬ブック関西デスク・井戸本征彦)

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