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毎週、毎週、新聞の見出しを考えるだけでも頭が痛いというのに、『生涯、競馬中毒』『記者席発 競馬へのラブレター』『競馬記者はつらいよ』『競馬の愉しみ』『競馬が大好きでよかった』『素晴らしきかな、競馬人生』『競馬からの贈り物』『酔いどれ記者のトレセン交遊録』『競馬業界、喜怒哀楽』『春夏秋冬・競馬漬け』『競馬熱中日記』『トレセン発 競馬が好きになる話』……と数に限りがない。いったいどうしたらいいんだ。
今年の春になって「『編集員通信』を単行本にしませんか」と声がかかったときは驚愕した。思うがままに書き殴ってきたこんな気ままな原稿が本として世に出ていいのだろうかと悩んだ。しかし、会社からOKが出たこともあってこの話はトントン拍子でまとまった。こんなことになるならもっと学術的なコラムにするんだったと悔やんだりもしたが、そんな原稿を書くような才覚もなければ覇気もない。それに、もう手遅れである。それからはというと、もう開き直るしか手がなかった。
冒頭に羅列したのは出版社が考えてくれた単行本のタイトル候補の数々。「どれかお好きなものがあれば」と言われたが、思いつくわけもない。ひととおり目を通してはみたが、どれもこれもいいような悪いようなでさっぱりイメージが湧かない。気がついたら「まあ、原稿の中身が中身だし、あんまり気取ったものでなければ……、なんでもいいっスよ」と返事をしていた。あ〜あ、我ながらなんといい加減なことか。
「巻末に競馬関係者の誰かと対談を」と編集者に言われたときには頭が痛くなった。「気楽にフリートークできる相手を」と言われたが、相手が誰になっても「お気楽フリートーク」で宴会か馬鹿騒ぎになってしまうのがいつもの私。悩んだ挙句、比較的、年齢差のない安藤勝己騎手に声をかけたところ快諾してくれた。対談当日は最初の5分だけあれこれ構想を練って会話を進めたが、ビールを一杯飲み終えるとすぐに脱線。酔って喋ってやっぱり大騒ぎした。「飲み会やコンパじゃないんだから、あんな内容では対談になりませんよ」と編集者から小言がくると覚悟したら、後日になって「先日の対談ですが、『盟友同士・超自然体対談』とタイトルをつけました。実に素晴らしい内容です。読者もきっと大喜びしますよ」との連絡が入って、しばし呆然とした(汗)。
東邦出版から10月25日発売(一部地域ではこれより早く店頭に並ぶこともあるとか)の単行本は、二転三転した結果、『トレセン発 馬も泣くほど、イイ話』に決まった。この本を読んで馬がほんとうに感激の涙を流すのか、それとも内容があまりにアホらしくて呆れ泣きするのか。できれば本屋で手に取ってたしかめていただきたいが、私と一緒で馬券の調子がいまイチの方、金欠の方は立ち読みでもOKである。
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競馬ブック編集局員 村上和巳
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