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早いもので、函館開催も折り返し地点に差しかかった。同時に今週からは夏の小倉も開幕する。去年もこの欄で書いた記憶があるが、函館のファンファーレを耳にすると北の海が恋しくなり、小倉のそれを聞くと新幹線に乗って遠くへ行きたくなる。夏は北海道か九州で過ごす生活を二十数年間続けてきたこともあって、そんなリズムが体にしっかりと染み付いているのだ。
夏の小倉開催がスタートすると、調教担当者1名と厩舎取材担当者2名が小倉競馬場の現地取材班となり、残りの人間は水、木、金と普段通りトレセンに出向き、金曜夜に現地入り。日曜日の最終レース終了後に帰栗する、いわゆる“通い”のスタッフとなる。今年の前半の開催は青木行雄が採時担当で、海士部彰と甲斐弘治が厩舎取材班として小倉へ滞在する。取材場所が分散され、馬も人間も二手に分かれるのだから、それはそれで厄介である。
昔は早目に小倉競馬場へ入厩して、しばらく現地に滞在する馬が多かったが、最近は直前輸送で小倉へ遠征するスタイルが主流になった。道路事情が改善されて輸送時間が大幅に短縮されたことや人件費(出張費)の削減も小倉に滞在する馬が減った理由だが、もうひとつ、競馬場の調教施設にも問題がありそうだ。
栗東にいる限りは馬の状態に合わせて、坂路、ウッドチップコース、プールといった調教施設を選択できる。つまり、足元の弱い馬は路盤の硬いダートコースを避けてクッションの効いたウッドチップコースや坂路を使用することができるし、運動量の不足はプール活用である程度は補える。ところが、出張先の小倉にはそんな馬たちが安心して調整できるコースがない。必然的に栗東でギリギリまで調整し、直前に競馬場へ輸送するパターンが多くなるのだ。函館入厩馬の数が多いのは、地理的、気候的な背景もあるが、それ以上に調教に使えるウッドチップコースがあるからこそ。
重賞が行われる週の小倉競馬場では公開調教が行われる。追い日の調教をファンに公開、先着数十名にはサンドイッチを配るサービスもある。普段は競走馬と接する機会の少ない地方の競馬ファンに対する企画としては素晴らしいが、ここで問題になるのは早目に入厩して小倉で調教をする馬が極めて少ないという現実。最近は栗東で行われている有力馬の調教をターフビジョンに映し出すという苦肉の策で凌いでいる現状だ。小倉競馬場が滞在馬であふれていた以前の時代に戻るとはとうてい考えられないが、せめて、存分にトレーニングできるように調教施設を整備してほしいものだ。
私事だが、今年も夏の小倉に出張の予定をなんとかでっち上げた。いまから8月末になるのを楽しみにしているが、旅行日程が一泊二日になるか二泊三日になるかは例によって小倉の馬券成績次第。いくつになっても、このちゃらんぽらんな性格は変わらない。
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競馬ブック編集局員 村上和巳
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