編集員通信


“真正な発走合図の判定”

 皐月賞で、発馬機内にて立ち上がり、騎手が落馬して競走中止したラガーレグルスについては、5月16日迄30日間の出走停止と、停止騎間の満了後に、出走予定競馬場で発走調教再審査を受けるよう制裁が課せられた。その件に関するファン、マスコミの反響はすさまじいものがあった。関西地区においては、5月17日(水)に栗東トレセン事務所で、JRAより発走業務についての説明会が開かれた。スターターが発走合図を送って、ゲートが開く迄の間には1秒にも足りない僅かな時間差が生じる。
 今回の件は、手元のスイッチを入れる際の最終確認では、真正なスタートの切れる状況であったものが、その空白の時間帯(刹那)で異変(馬が立ち上がる)が生じたことによる。別に珍しいことではなく、しばしば起こることで、騎手さえ落ちていなければ問題にはならなかった事。非難の主たるものは“スタートを切れる態勢に戻るまでもっと待ってやれなかったのか”というものだった。スタートのやり直し(カンパイ)については、場内放送では繰り返し伝えられているように、発走合図が真正でないと発走委員が認めた時以外は行わない。日本中央競馬会競馬施行規定の中には、真正でないと認められる具体例は何ひとつ示されていない。“ゲートが開かなかった”とか、当然ありそうなものでも明示されていない。条文の私的解釈では、野球の審判員が下すアウト、セーフ、或いはストライク、ボールの判定に等しく、一旦下された以上は覆らない“発走委員の胸三寸にあり”ということ。
  まあ何はともあれ、この種の問題の再発防止策として、発馬機の改良やら、発馬練習の改善等、すぐやれることについては手を打たれているし、ゲートボーイの導入についても、採否はともかく検討はされている模様。今後もこれに似た偶発事故はなくならないだろうが、ひと昔前に比べると、一方的に押し通すことなく、ファンの声に耳を傾けるJRAの姿勢軟化は、競馬発展の為には良いことだ。

編集局長 坂本日出男

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